今日もまた、嫌味なくらいに空は晴れ渡っている。
大統領がマスクもせずに病院を訪ねたという事実が李さんにとっていかに大きな衝撃だったか、ぼくにはいまだに推し量りかねる。
ぼくだって、李さんのことを始終笑ってばかりいたわけではない。
バーゼル行きを取りやめたことで、李さんは心の落ち着きを取り戻したようだった。
フランス語が話せないわりに、李さんは近所の市場で顔が知られている。
暇にまかせて昼寝をしていたら、携帯電話の着信音で起こされた。
燦燦と注ぐ日の光が悩ましいものになるなんて、パリ市民の誰が予想しただろう。
前回触れた買い占めの問題はぼくの頭の中で多少あとを引いた。
やはり世界はきれいにひっくり返ってしまったらしい。
考えてみればこれはいくぶん奇妙な書類だ。
「我々は、戦争中、なのです」
店頭にはオレンジ色のラナンキュラスの小さな鉢が並べられていて、
「もうすぐ閉店しますから、お引き取りの準備を!」